本記事は、睡眠時無呼吸症候群(SAS/OSAS)に対するCPAP(持続陽圧呼吸療法)の基礎と、実際の使用感、よくある悩みへの対処を整理したガイドです。腎機能や血圧との関係についての補足は、既存記事もあわせてご参照ください(内部リンク: 低eGFR・高血圧とCPAPの考え方 )。

CPAPとは?――仕組みと期待できること

CPAPは、鼻や口に装着したマスクから一定の圧力で空気を送り、睡眠中に狭くなりがちな上気道を物理的に開き続ける在宅治療です。いびきや無呼吸・低呼吸の発生を抑え、睡眠の分断を減らして睡眠の質(深睡眠・連続性)を改善することが主な目的です。
- ポイント
- 「根本原因を完全に治す外科手術」ではなく、就寝中に症状をコントロールする療法。
- 在宅レンタルが主流で、外来で定期フォロー(使用時間・リーク・AHIなどの確認)を行います。
- 保険診療では、一般に無呼吸低呼吸指数(AHI)が一定以上の場合などが対象。詳細は医療機関の判断に従います。
50代以降は体重増加や上気道の筋緊張低下などが重なり、SASが目立ちやすくなります。日中の強い眠気・倦怠感・集中力低下・起床時の頭重感・高血圧の指摘・大いびきがある場合は、早めの評価が推奨されます。
CPAP治療で感じやすいメリット

CPAPを適切に継続すると、次のような変化を体感する人が多いです(個人差があります)。
- 日中の眠気・だるさの軽減
夜間の覚醒回数が減り、分断睡眠が改善。朝の「寝た感」が戻りやすくなります。 - いびきの改善
同居家族の睡眠環境が良くなるという副次的メリットも。 - パフォーマンス向上
集中力・反応速度・気分の安定など、日中機能の回復を実感しやすいです。 - 生活習慣病リスクへの良い影響の期待
高血圧や心血管イベントとの関連が論じられる領域です。治療の第一目的は睡眠の質の改善ですが、血圧・代謝指標が良い方向に動くケースがあるとの報告もあります(詳細は主治医と要相談)。腎機能や高血圧との整理は既存記事もご参照ください → 内部リンク。
副作用・つまずきやすいポイントと対処

CPAPは“続ける”前提の治療。違和感の軽減がカギです。
- 鼻づまり・口や喉の乾燥
→ 加湿器内蔵モデル/加湿度アップ、就寝前の保湿ケア、鼻腔拡張テープなどを検討。 - マスクの圧迫感・肌トラブル
→ マスクサイズ・形状(鼻マスク/鼻口マスク/ピロ―型)を見直し。接触部に保護テープやシリコンパッド。 - 空気漏れ(リーク)・目の乾燥
→ フィット・ベルトテンションを微調整。枕の高さ・寝姿勢(横向き)も影響します。 - 機械音が気になる
→ 防振マット・設置位置の工夫、耳栓、ホワイトノイズの導入など。 - 継続率の壁
→ 「最初の2〜4週間」が山場。完璧を求めず“毎晩とりあえず装着”の習慣化を優先しましょう。
使い始める手順と費用感(一般的な流れ)

- 診断:問診・スクリーニング(簡易検査)→ 必要に応じて終夜ポリソムノグラフィー。
- 適応判定:AHIなどの基準と症状を総合的に判断。
- 機器選定:オートCPAP(APAP)か固定圧CPAP。マスクは複数試着が基本。
- 在宅レンタル開始:装着指導。1日4時間以上の使用が推奨(保険算定要件に関する扱いは医療機関に従う)。
- 外来フォロー:月1回目安でデータ確認・設定微調整・副作用対策。
- 費用感:保険診療の自己負担は約4000円程度のことが多い(詳細は施設と契約内容に依存)。
途中で「合わない」と感じたら、機種・マスク・圧設定・加湿の見直しで劇的に改善することがあります。遠慮せず相談を。
【体験談】慣れるまでの数週間、睡眠導入剤を併用した話
CPAPを導入した初期は、マスクの圧迫感や空気の流れに体が驚き、寝つきにくい夜が続きました。私は主治医に相談し、短期間だけ睡眠導入剤を併用。装着への慣れが進むと、導入剤なしでも自然に眠れるようになり、現在はCPAP単独で十分に休めています。
- 医師と相談して使用可否・期間を決めること
- 目標は「CPAPに慣れるまでの橋渡し」であり、長期常用を前提にしないこと
- 「寝られない夜=失敗」ではなく、装着して横になる時間を積み上げる意識
これは私の経験談であり、効果を断定するものではありません。服薬の可否や種類は必ず医師にご相談ください。

毎晩続けるための実践テクニック
- 装着ルーティン化:歯磨き→加湿水補充→装着→就寝、の固定化。
- 最初は“横向き”から:上気道が開きやすく、リークも減りやすい。
- マスク接点のスキンケア:洗顔→軽い保湿→装着。皮脂や汗はリークの原因。
- 環境ノイズ対策:機器はベッドから少し離し、ホースを引っ張らない配置に。
- データを“見える化”:使用時間・AHI・リークを週1でチェックして小さな達成感を得る。
- 旅行・出張:コンパクトCPAPや外付けバッテリー、延長コードを準備。ホテルは加湿が弱いので口腔乾燥に注意。
よくある質問(Q&A)

Q1. 体重が落ちたらCPAPはやめられる?
A. 体重減少で症状が軽くなる例はありますが、自己判断の中止はNG。再評価(検査)で主治医と相談を。
Q2. マスクがどうしても合わない
A. 形状・サイズの再フィッティング、枕の見直し、リーク対策小物の導入で改善することが多いです。
Q3. 鼻・口の乾燥がつらい
A. 加湿レベルの再設定、就寝前の保湿、鼻うがいの併用を検討。医師に症状を共有しましょう。
Q4. 眠れない夜が続く
A. 圧設定・立ち上がり時間(ランプ機能)の最適化でラクになります。必要に応じて短期的な睡眠導入剤の併用を主治医と相談。
Q5. 機器の寿命や交換
A. 機器本体やマスククッション、フィルタは消耗品。定期交換で衛生と性能を保ちます(交換サイクルは契約・機種依存)。
Q6. 金額と支払いについて
A. 本記事作成時、筆者は、毎月3930円(医療点数1310点、3割負担)の費用負担があった。病院側へ支払い、病院から業者への支払いがある様子。月に1回、必ず通院が必要。月に1回行かない場合、病院側は患者に金銭を貸すことができないため支払いする必要があり、迷惑をかけるため機材の継続使用ができなくなる可能性もある。
生活習慣の並走が“効き”を底上げする

CPAPに“任せきり”にせず、生活改善を並走させると体感が安定します。
- 体重管理:体脂肪・頸部周囲径の低下は上気道の狭窄軽減に寄与。
- アルコール量の調整:就寝直前の多量飲酒は無呼吸・いびきを悪化させやすい。
- 禁煙:粘膜の炎症・浮腫を助長しやすいので改善が期待できます。
- 睡眠衛生:就寝前のスマホ控え、入浴・照明・室温調整、カフェインの時間管理。
- 鼻呼吸の促進:鼻のケア・姿勢の工夫で、マウスリークの抑制にもつながります。
腎機能・血圧の話題は複合要因が絡みます。総合的な判断は主治医と相談しつつ、詳細の背景は既存記事(内部リンク)も確認してください。
まとめ――“毎晩つける”を続けるだけで、世界は変わる
- CPAPは症状を睡眠中にコントロールする在宅療法。目標は質の高い連続睡眠を取り戻すこと。
- 副作用や違和感は設定・マスク・加湿・生活環境の調整で多くが緩和可能。
- 導入初期の数週間が勝負。必要なら医師と相談し、短期的な支援策(例:睡眠導入剤)も検討。
- 体重管理・飲酒量・睡眠衛生などの生活習慣と二人三脚で、体感とデータが安定します。
- 腎機能や血圧などの話題は、既存記事での整理もあわせて参照し、主治医と定期評価を。
次の一歩:今夜も“とりあえず装着”。完璧より継続を。週単位でデータを見ると、小さな前進が必ず見つかります。

内部リンク/関連記事の案
- 低eGFR・高血圧とCPAPの考え方(既存記事)
→ https://hayaku-kaerou.com/2025-07-18/50s_healthcare001_cpap_low-egfr_ht/ - 睡眠衛生チェックリスト(作成予定)
- CPAPマスク比較とフィッティングのコツ(作成予定)